デジタルトランスフォーメーション(DX)が加速する現代において、企業や組織を脅かすサイバー攻撃は日々高度化・巧妙化しています。中でも「マルウェア」による被害は、業務停止や情報漏洩など、経営に直結する深刻なダメージを引き起こす最大の要因の一つです。
「自分たちは大丈夫」と考えていても、攻撃者はセキュリティの隙を常に狙っています。2025年(令和7年)に公表された最新の統計でも、ランサムウェアやサプライチェーン攻撃の被害は高止まりしており、基本的な対策だけでは防ぎきれない事例も増えています。
本記事では、マルウェアの基礎的な定義から、代表的な種類、最新の感染経路、そして感染してしまった場合の対処法と予防策について、公的機関の一次情報を交えて網羅的に解説します。また、高度なセキュリティ対策を低コストで実現するSHIFT SECURITYの専門サービスについてもご紹介します。
マルウェア(Malware)とは、「Malicious(悪意のある)」と「Software(ソフトウェア)」を組み合わせた造語です。その名の通り、コンピューターやスマートフォン、タブレット、サーバーなどのデバイスやネットワークに対して、何らかの害を与えるために作成された「悪意のあるソフトウェア全般」を指します。
よく「コンピューターウイルス」と「マルウェア」が混同されますが、ウイルスはマルウェアという大きなカテゴリーに含まれています。
悪意のあるソフトウェアの「総称」(大カテゴリー)
マルウェアの「一種」自己増殖し、他のファイルに寄生して広がる特徴を持つプログラムのこと。
つまり、ウイルスも、ランサムウェアも、トロイの木馬も、すべて「マルウェア」の一種です。近年はウイルスの枠に収まらない多様な攻撃手法が登場しているため、セキュリティ業界ではより広義な「マルウェア」という言葉が一般的に使われています。
マルウェアに感染すると、以下のような被害が発生します。
顧客情報、クレジットカード情報、機密技術などが流出する。
データの暗号化や削除により、業務が継続不能になる。
データの復旧と引き換えに身代金を要求される。
自社のPCが乗っ取られ、他社への攻撃の加害者として利用される。(ボット化)
被害者の知らないところで不正な活動を行い、気づいたときには手遅れになっているケースも少なくありません。
マルウェアには多くの種類があり、攻撃者の目的によって使い分けられています。ここでは、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の 「情報セキュリティ10大脅威 2025」や警察庁の資料などで特に注意喚起されている主要なマルウェアを解説します。
【特徴】 感染した端末やサーバー内のデータを勝手に暗号化し、「元に戻したければ金を払え」と身代金(Ransom)を要求するマルウェアです。 【脅威】 近年はデータを暗号化するだけでなく、「身代金を払わなければ盗んだデータを公開する」と二重に脅迫する「二重脅迫型」が主流です。IPAのランキングでも長年1位に君臨し続けている、企業にとって最大の脅威です。
【特徴】 一見すると無害で有用なソフトやファイル(PDF、画像、アプリなど)を装ってデバイスに侵入し、ユーザーが実行すると裏で悪意ある動作を開始します。 【脅威】 自己増殖はしませんが、外部からの遠隔操作を可能にする「バックドア(裏口)」を作成したり、キーボード入力情報を盗む「キーロガー」として機能したりします。
【特徴】 宿主となるファイルを必要とせず、単体で存在し、ネットワークを通じて爆発的に自己増殖(コピー)を繰り返します。 【脅威】 メールやネットワークの脆弱性を悪用して拡散し、ネットワーク帯域を圧迫してシステムダウンを引き起こしたり、他のマルウェアを呼び込む媒体となったりします。
【特徴】 ユーザーに気づかれないようにPCやスマホに潜伏し、個人情報、閲覧履歴、パスワードなどを収集して攻撃者に送信します。 【脅威】 マーケティング目的のグレーなものから、完全な犯罪目的のものまで多岐にわたります。フリーWi-Fiや無料アプリを経由して感染するケースが多く見られます。
【特徴】 他の強力なマルウェアを呼び込むための「運び屋」として機能するタイプのマルウェアです。代表例として「Emotet(エモテット)」が知られています。 【脅威】 一度感染すると、端末内の過去のメール情報を盗み取り、実在の取引先や同僚になりすましてウイルスメールをばら撒くため、感染が連鎖的に拡大します。
【特徴】 ハードディスク上にファイル(実行形式のファイル)を残さず、コンピューターのメモリ上だけで動作する新しいタイプのマルウェアです。 【脅威】 従来のウイルス対策ソフトは「ファイルのスキャン」を行うものが多いため、検知が非常に困難です。正規のツール(PowerShellなど)を悪用して攻撃を行うため、発見が遅れがちです。
【特徴】 感染したデバイスの計算能力(CPU/GPUリソース)を勝手に使用し、仮想通貨のマイニング(採掘)を行います。 【脅威】 PCの動作が極端に遅くなったり、バッテリーの消耗が激しくなったりします。直接的なデータ破壊は行いませんが、業務効率を著しく低下させます。
攻撃者はあらゆる手段を使ってシステム内部へ侵入しようと試みます。2025年の最新動向において特に警戒すべき経路を紹介します。
テレワークの普及に伴い、外部から社内ネットワークに接続するためのVPN装置やRDPが主要な攻撃対象となっています。
【手口】
VPN機器の脆弱性(セキュリティ上の欠陥)を放置している場合や、ログインパスワードが単純な場合、攻撃者に突破され、そこからランサムウェアなどを送り込まれます。警察庁のレポートでも、ランサムウェア被害の多くがこの経路を起点としていると報告されています。
メールは依然として主要な感染経路です。
【添付ファイル】
ExcelやWordファイル、ZIPファイルを開かせることで、不正なプログラム(マクロなど)を実行させます。
【URLリンク】
本文中のリンクをクリックさせ、悪意あるWebサイトへ誘導してマルウェアをダウンロードさせます。 最近では、実在する組織や緊急の用件(請求書送付、アカウント停止通知など)を装うフィッシングメールの手口が極めて巧妙化しています。
Webサイトを閲覧しただけで、ユーザーが気づかないうちにマルウェアが強制的にダウンロード・インストールされる攻撃です。
【手口】
攻撃者は、セキュリティの甘い正規のWebサイトを改ざんし、閲覧者にマルウェアを感染させる罠を仕掛けます。「怪しいサイトを見なければ大丈夫」という常識は通用しません。
インターネット上で配布されている無料ソフトや、海賊版ソフト、偽のスマホアプリにマルウェアが仕込まれているケースです。
【手口】
便利なツールを装いインストールさせ、裏でアドウェアやスパイウェアを動作させます。
USBメモリや外付けHDDをPCに接続した瞬間に感染するケースです。
【手口】
道端に落ちていたUSBメモリを拾って社内PCに挿してしまったり、私物のUSBメモリを介してウイルスを持ち込んだりすることで、物理的に閉じたネットワークでも感染が広がります。
もし以下のような症状が見られた場合、マルウェア感染の疑いがあります。
PCの起動やソフトの立ち上がりが極端に遅い、頻繁にフリーズする。
マウスカーソルが勝手に動く、PCが意図せず再起動する、身に覚えのないメールが送信されている。
デスクトップの壁紙が変わった、大量のポップアップ広告が表示される、「あなたのPCは感染しています」という偽の警告が出る。
拡張子が勝手に変わり、ファイルが開けなくなる。(ランサムウェアの典型的症状)
何も操作していないのに常に通信ランプが点滅している。
感染が疑われる場合、初動対応が被害の拡大を防ぐ鍵となります。以下の手順を冷静かつ迅速に行いましょう。
『最優先事項』です。LANケーブルを抜き、Wi-Fiをオフにしてネットワークから隔離します。これにより、感染した端末から他のPCやサーバーへマルウェアが拡散するのを防ぎ、情報の外部流出をストップさせます。
組織の一員であれば、自己判断で解決しようとせず、速やかに社内のセキュリティ管理者や情報システム部門へ連絡し、指示を仰いでください。隠蔽は最悪の結果を招きます。
どのような操作をした時に何が起きたか、画面にどんなメッセージが出ているか(スマートフォンで撮影するなど)を記録します。
セキュリティソフトを最新の状態にしてフルスキャンを実施し、マルウェアの検知・隔離・駆除を行います。ただし、高度なマルウェアは完全には駆除できない場合もあります。
駆除が困難な場合や、システムが破壊された場合は、デバイスを初期化(OS再インストール)し、安全なバックアップデータから復元する必要があります。
なぜ感染したのか(原因)を特定し、パスワードの変更、ソフトウェアのアップデート、ルールの見直しなどの対策を講じます。
企業においては、「技術的対策」「運用的対策」「教育」を組み合わせた多層防御が必要です。
WindowsなどのOSや利用ソフトを常に最新の状態に保ち、セキュリティホール(脆弱性)を修正します。
従来のウイルス対策ソフト(EPP)に加え、侵入後の脅威を検知・対応するEDR(Endpoint Detection and Response)の導入が進んでいます。
社内ネットワークやクラウド環境の通信ログを常時監視し、不審な挙動を早期発見する体制を構築します。
従業員が必要なデータにのみアクセスできるよう権限を最小限にし、管理者権限の利用を厳格化します。
ランサムウェア対策として、バックアップデータをネットワークから切り離した場所(オフライン)にも保存する「3-2-1ルール」に基づき、定期的にバックアップを実施します。
私物のUSBメモリやPCの業務利用を制限、または禁止します。
不審なメールの見分け方や、事故時の連絡フローについて、全従業員へ定期的な教育を実施します。IPAの「情報セキュリティ10大脅威」などを教材に、最新の手口を周知することが有効です。
対策の優先度を決めるには、脅威のトレンドを知ることが重要です。政府機関等の最新レポートを参照しましょう。
組織における脅威の第1位は「ランサムウェアによる被害」であり、10年連続して最も注意すべき脅威とされています。また、「サプライチェーンや委託先を狙った攻撃」が2位、「システムの脆弱性を突いた攻撃」が3位となっており、外部との接続点や弱点が狙われていることがわかります。
ランサムウェアの被害報告件数は高水準で推移しており、VPN機器やリモートデスクトップからの侵入が依然として高い割合を占めています。また、フィッシング報告件数は100万件を超え、金融機関やクレジットカード会社を騙る手口が横行しています。
マルウェアは、企業の規模や業種を問わず、すべての組織にとって避けて通れない脅威です。VPN機器の脆弱性放置や、従業員が誤って開いたメールが、ランサムウェア感染による事業停止という最悪の事態を招く可能性があります。
まずは、OSのアップデートやバックアップといった基本的な対策を徹底すること。そして、侵入されることを前提とした「監視体制(SOC)」を整備することが、現代のセキュリティ対策の要となります。
自社だけで高度な監視体制を構築することに限界を感じている場合は、プロフェッショナルへのアウトソースを検討してみてはいかがでしょうか。
日々巧妙化するマルウェアの脅威に対し、自社だけのリソースで24時間365日の監視体制を維持することは、コスト・人材の両面で非常に困難です。そこで有効なのが、専門家による外部SOCサービスの活用です。
SHIFT SECURITYが提供する「セキュリティ監視・分析サービス」は、企業のセキュリティ運用課題を解決する強力なソリューションです。
自社のセキュリティ体制に不安がある方、具体的な監視サービスの導入を検討されている方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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