現代のビジネス環境において、企業が保有する「情報」は「ヒト・モノ・カネ」に次ぐ第4の経営資源と言われています。しかし、DX(デジタルトランスフォーメーション)の急速な進展や業務のリモート化に伴い、企業を狙うサイバー攻撃や内部不正のリスクはかつてないほど高まっています。
「情報セキュリティ対策が必要なのはわかっているが、具体的にどこから手を付ければよいかわからない」
「セキュリティ担当者が不足しており、最新の脅威に対応しきれない」
このような課題を抱える経営者やIT担当者の方も多いのではないでしょうか。
情報セキュリティ対策は、単なる「守り」ではなく、企業の信頼性を担保し、持続的な成長を支えるための「投資」です。
本記事では、情報セキュリティの基礎概念から、現場で有効な10の基本的な対策、さらに政府や公的機関の一次情報に基づく最新のリスク事例までわかりやすく解説します。貴社の安心・安全なビジネス環境構築と、イノベーション推進の一助としてお役立てください。
情報セキュリティ対策を検討する上で、まず理解しておかなければならないのが「CIA」と呼ばれる3つの基本要素です。これは、総務省やIPA(独立行政法人情報処理推進機構)も定義する、情報資産を守るための国際的に広く用いられている考え方・枠組みです。
「許可された人だけが情報にアクセスできる状態」を指します。
例えば、社員名簿や顧客リスト、未発表の製品データなどが、関係者以外(社外の人間や権限のない社員)に見られないようにすることです。多要素認証(MFA)などのより安全な認証方法の導入やアクセス権限の制限、暗号化などが具体的な対策となります。
「情報が正確であり、改ざんや欠損がない状態」を指します。
データが何者かによって不正に書き換えられたり、システム障害などにより内容が損なわれないよう、防止・検知する仕組みを整えることが目的です。Webサイトの改ざん防止や、デジタル署名による改ざん検知などがこれに該当します。完全性が損なわれると、誤った情報に基づいて経営判断を下してしまうリスクがあります。
「必要なときにいつでも情報やシステムが使える状態」を指します。
システム障害やサイバー攻撃、自然災害などによって業務が停止すると、事業の継続や顧客からの信頼に重大な影響を及ぼす可能性があります。ランサムウェア攻撃によるデータの利用不能や、災害によるサーバー停止といった事態に備え、バックアップ体制の構築や回線の冗長化などを通じて、ビジネスへの影響を最小限に抑えることが求められます。
これら3つの要素をバランスよく維持することが、情報セキュリティにおける基本的な考え方です。近年ではこのCIAの考え方を土台として、「真正性」「責任追跡性」「否認防止」「信頼性」といった観点を含めた、「情報セキュリティの7要素」として語られることも増えてきています。
「情報セキュリティ」と「サイバーセキュリティ」。この2つの言葉は混同されがちですが、厳密には対象範囲が異なります。
情報セキュリティは、デジタルデータだけでなく、紙の書類、会話、ホワイトボードの書き込みなど、企業が扱う「すべての情報資産」を対象とする広い概念です。一方、サイバーセキュリティは「サイバー空間(インターネットやネットワーク上)」にあるデジタルデータの保護に特化しています。つまり、サイバーセキュリティは情報セキュリティの一部(サブセット)であると言えます。
現代において、サイバーセキュリティ対策は情報セキュリティの中核を占めています。『情報セキュリティ白書』などの資料でも言及されている通り、サイバー空間での防御が破られることは、即座に企業経営の根幹を揺るがす事態に直結します。情報漏えいによる賠償金、システム停止による機会損失、社会的信用の失墜、そして法的責任の追及。これらは一担当者の責任範囲を超え、経営存続に関わる重大なリスクです。そのため、経営層がリーダーシップを発揮し、全社的な取り組みとして推進することが不可欠です。
なぜ今、これほどまでに情報セキュリティが叫ばれているのでしょうか。その背景には、ビジネス環境の劇的な変化があります。
企業が競争力を高めるためにDXを推進し、業務システムをクラウドへ移行するケースが急増しています。これは業務効率を上げる一方で、インターネット経由で社内システムにアクセスする経路が増えることを意味し、攻撃者にとっての「侵入口」が増加している状態とも言えます。
リモートワークやハイブリッドワークの普及により、社外のネットワーク(自宅のWi-Fiやカフェの回線)から社内データへアクセスする機会が増えました。従来の「社内ネットワークの内側なら安全」という境界型防御の考え方が通用しなくなっています。
攻撃者側も変化しています。「RaaS(Ransomware as a Service)」のように、サイバー攻撃ツールが闇市場でサービスとして提供されるようになり、高度な技術を持たない攻撃者でも容易に企業を攻撃できるようになりました。IPAが毎年発表する「情報セキュリティ10大脅威」においても、ランサムウェア被害やサプライチェーン攻撃、内部不正による情報持ち出しなどが上位にランクインしており、攻撃の手口は年々多様化し、巧妙化しています。
客観的なデータに基づき、現在の脅威トレンドを見てみましょう。
IPA(独立行政法人情報処理推進機構)や総務省の統計によると、企業へのサイバー攻撃検知数や情報漏えい事故の報告件数は増加傾向にあります。『令和6年版 情報通信白書』などのデータを参照すると、サイバー攻撃に関連する通信数は2015年と比較して大幅に増加しているとの報告があります。
特に顕著なのが以下の傾向です。
特定の企業や業界を狙い撃ちにする攻撃が増加傾向にあります。
セキュリティの堅牢な大企業を直接狙うのではなく、対策が手薄な関連会社や取引先を経由して侵入する手口が増えており、多くのケースで確認されています。
1件のインシデントにおける被害額や、影響を受ける個人情報の件数が増大しており、復旧までに数ヶ月を要する事例も珍しくありません。
高度化する脅威に対抗するためには、以下の「3つの視点」での対策を組み合わせることが基本となります。
「ルールを作り、人を動かす」対策です。
「IT技術を用いて防御する」対策です。
「物理的な接触や侵入を防ぐ」対策です。
これら3つはどれか一つが欠けてもセキュリティレベルの低下につながります。例えば、最新のセキュリティソフトを入れていても(技術的)、従業員がパスワードを書いた付箋をモニターに貼っていれば(管理的・物理的)、そこから不正アクセスが発生するリスクが高まります。
かつては、社内と社外の境界に壁を作る「境界防御」が主流でしたが、クラウド利用やリモートワークが普及した現在では、単一の対策では十分に防ぎきれない場合があります。そこで推奨されているのが、攻撃の段階ごとに複数の防御壁を設ける「多層防御(Defense in Depth)」という考え方です。
ファイアウォールやメールフィルターで、不正な通信やマルウェアの侵入を防ぐ。
万が一侵入された場合に備え、ネットワークを分割したり、権限を細分化して被害の拡大(ラテラルムーブメント)を防ぐ。
情報を外部へ持ち出そうとする通信を検知・遮断し、情報漏えいを防ぐ。
これに加え、昨今では「ゼロトラスト(何も信頼しない)」の概念を取り入れる企業が増えています。社内からのアクセスであっても無条件に信頼せず、都度認証を行うアプローチです。VPNの安全な利用や、ID管理(IdP)の強化、EDR(Endpoint Detection and Response)の導入などが実践的なポイントとなります。
内部不正や、ID乗っ取りによる被害を最小限に抑えるために極めて重要なのが「適切な権限管理」です。
IPAなどの情報セキュリティに関する公的なガイドラインでも、従業員には「業務上必要な最小限の権限」のみを付与することが重要とされています。全員がすべてのファイルにアクセスできる状態は、利便性は高いものの大きなリスクとなります。
退職者や異動者のアカウントがそのまま残っていませんか? 不要なアカウント(休眠ID)は攻撃者の格好の隠れ蓑になります。定期的にアカウントの棚卸しを行い、不要なIDは即座に削除または無効化する必要があります。
特定の担当者一人に権限を集中させないことも重要です。例えば、システムの設定変更を行う人と、そのログを監査する人を分けることで、内部不正の抑止力となります。
多くのサイバー攻撃は、OSやソフトウェアの「脆弱性(セキュリティホール)」を突いて行われます。
Windows UpdateなどのOS更新はもちろん、Webブラウザや業務アプリ、VPN機器のファームウェアなどのパッチ管理を徹底しましょう。特に、「既知の脆弱性」をなくし、攻撃者に狙われるリスクを低減するため、定期的な「脆弱性診断」を実施し、自社のシステムに穴がないかを確認することが推奨されます。
クラウドサービス(AWS、Azure、Salesforceなど)の設定ミスによる情報漏えいも多発しています。「公開範囲の設定ミス」で個人情報が誰でも見られる状態になっていた、という事故は後を絶ちません。クラウドの設定を定期的にチェックし、多要素認証(MFA)を必須化するなどの対策が重要です。
ここでは、実際に発生した重大インシデントの事例(類似ケース含む)をもとに、その教訓と対策を解説します。
2020年代に発生した大手メディア企業への大規模なサイバー攻撃では、ランサムウェアによりサーバー内のデータが暗号化され、さらに個人情報がダークウェブ上に公開されるという「二重恐喝」の被害を受けました。
数十万人規模の個人情報流出、主要事業の停止、システム復旧に伴う多額の特別損失が発生。
データのオフラインバックアップ(ネットワークから切り離したバックアップ)、VPN機器等の脆弱性の即時修正、不審な挙動を検知する24時間監視体制の構築が必要です。
地方自治体が業務委託していた企業から、住民の個人情報が流出するサプライチェーン攻撃が報告されています。原因は委託先企業のセキュリティ対策不備でした。
多数の住民の個人情報流出、住民からの信頼失墜、損害賠償請求、委託先企業の入札停止処分。
委託先の選定時にセキュリティ基準を設ける、契約書にセキュリティ条項(監査権限など)を盛り込む、委託先も含めたサプライチェーン全体でのリスク管理を行うことが求められます。
転職を控えた従業員が、営業秘密である顧客情報や技術データを不正に持ち出し、転職先の競合企業で使用した事例です。
技術情報の流出による競争力低下、不正競争防止法違反による刑事訴訟。
USBメモリ等の外部記憶媒体の接続制限、アクセスログの常時監視と異常検知(大量データのダウンロード検知)、退職時の誓約書提出と権限の即時剥奪。
どれほど強固な対策をしても、サイバー攻撃や災害のリスクをゼロにすることはできません。「被害に遭うこと(有事)」を前提とした準備がBCP(事業継続計画)です。
ランサムウェア対策として最も有効なのはバックアップです。しかし、「バックアップは取っていたが、戻し方(リストア)がわからず復旧に時間がかかった」「バックアップデータも暗号化されてしまった」という失敗事例が多くあります。重要なデータでは「3-2-1ルール」(データは3つ保持し、2種類の異なる媒体で管理、1つは遠隔地やオフラインで保管する)を徹底するとともに、定期的に復旧訓練をすることが有効です。
攻撃を受けた際、誰が、いつ、どのような判断を下すのか。初期対応の遅れは被害を拡大させます。あらかじめ対応フロー(手順書)を策定し、緊急連絡網や意思決定プロセスを明確にしておく必要があります。
最新のセキュリティシステムを導入しても、最終的にそれを使うのは「人」です。ヒューマンエラーや意識の低さが最大のセキュリティホールになることは珍しくありません。
「怪しいメールは開かない」と口で言うだけでなく、実際に模擬の攻撃メールを送信し、開封率や対応状況を確認する訓練が有効です。これにより、従業員の当事者意識を高めることができます。
「不明なUSBメモリは絶対にPCに挿さない」「フリーWi-Fiで業務を行わない」といった具体的で分かりやすいルールを浸透させましょう。また、ミスをしてしまった際に「怒られるから隠そう」と思わせないよう、迅速な報告を評価する文化(心理的安全性)を醸成することも、被害拡大を防ぐ重要なポイントです。
情報セキュリティ対策は、一朝一夕で完成するものではありません。「CIA」の基礎理解から始まり、管理的・技術的・物理的対策を組み合わせ、多層防御を構築し、さらにはサプライチェーンや内部不正まで視野に入れる必要があります。
しかし、これら全てを自社のリソースだけで完璧に行うのは、専門知識を持った人材の不足やコストの面で非常に困難なのが実情ではないでしょうか。
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